最近、自然災害の被害が各地に広がっています。
仮設住宅や避難所での生活など、今までの生活とはかけ離れた環境で過ごすということは大人、子供に関わらず、大変なストレスを感じていることと思います。
PTSD(外傷後ストレス障害)とは、
ものです。
PTSDは誰にでも起こることではありません。
しかし、誰にでも起こりうるものです。
子供が何らかの要因によって心にストレスを感じ、それがPTSDとして残り苦しむことになったときに親ができる心のケアと、PTSDと発達障害との類似点についてまとめてみました。
Contents
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子供のPTSDの原因と症状
大人のPTSDの症状は、
- 突然つらい記憶がよみがえる。
- 常に神経が張り詰めている。
などがいつまでも続きます。
同じように、時間が経っても、その体験や経験に対して強い恐怖を子供が感じている場合にはPTSDとして残っている可能性があります。
しかし、その症状は、子供の年齢によって違います。
2歳6か月まで
- 夜中に目が覚めてしまう。
- 大きな音、聞きなれない音に敏感になる。
- トラウマを思い出すような状況を避ける。
- トラウマを思い出す状況に対し、驚いたり叫んだりする。
- トイレトレーニングが上手くいかなくなる。
- ぐずる・泣きわめく・強情になる・わがままになるなどの変化。
- 親と離れることに不安を感じるようになる。
- 身体の硬直。
- 今まで話せた言葉が出てこない。
- 今までできていた運動ができなくなる。
- 引きこもり。
2歳6か月~6歳
- 出来事を繰り返し話題にする。
- 出来事を混乱し理解している。
- 物事を魔術的に解釈する。
- 外傷のイメージを強烈に思い出す。
- 外傷体験を再現するような遊びをする。
- 悪夢や夜に起きて泣き出すなどの睡眠障害。
- 不安や恐怖を表現する。
- 無口になる。
- 活動に対しての関心が低下する。
- 今まで出来ていたことが出来ないという退行を起こる。
- 集中力が低下する。
- 離れることに対しての不安。
- 引きこもり。
6歳~11歳
- 外傷的な出来事を繰り返し語る。
- 不安や恐怖を明らかに表す。
- 具体的なものへの恐怖がある。
- 出来事を再現する。
- 同じことが起こるのではないかと不安になる。
- 外傷のイメージを思い出す。
- 集中力の低下。
- 攻撃的な態度をとる。
- 今まで出来ていたことが出来なくなる退行。
- 物事に対する興味がなくなる。
- 睡眠障害。
- 引きこもり。
- 自分に罪があって罰を受けていると感じる。
- 行動・気分・性格の変化。
- 失禁などのトイレの失敗が増える。
- 親の反応に過敏になる。
11歳~18歳 (*思春期で大人への移行時期でもあるため複雑である)
- 外傷を再現し、逸脱した行動をする。
- 恥ずかしい、罪責感がある、低い自己評価から他人との距離を置くようになる。
- 引きこもり、心を閉ざしてしまう。
- 事故を多発する。
- 活動性が高くなる。
- 睡眠障害。
- 摂食障害。
- 外傷のイメージを思い出す。
- 人間関係の持ち方に変化が表れる。
- 大人になり急ぐ。
このように、子供の年齢で表れる症状は様々です。
日ごろから子供の様子を見ていないと分からないものも多いので注意が必要ですね。
親ができる心のケア
子供の成長を考えると、医療的な薬物よりも“日常レベルでの関わり方”で治療することが望ましいといわれています。
親のできる心のケアとしては、
- 子供に関わる時間を増やすこと。
- 子供の話すことに耳を傾けること。
- 感情を表現できる機会を持ち、感情を受け止めてあげること。
- 子供らしい活動や遊びを保障すること。
- ストレスに対して、どのように反応すれば良いのかを教えること。
といわれています。
しかし、心の問題は外からはわかりにくいことや、サインに気が付くことも子供の成長につれて難しくなることも事実です。
親だけでは、その負担も大きくなります。
周りの人たちの助けを借りながら、子供の様子を観察しサインに気が付くことが大切です。
外からわかりにくいからこそ、たくさんの人の目を通して観察し、子供が話しやすいと思える相談先を作り、子供の話に耳を傾けるようにすることです。
親は子供の最後の砦なのだと関わりを増やすなかで伝えていくことが大切だと思います。
子供もそんな関わりを通じ、自分の話す出来事を整理し、自分の中で解決できるようになります。
心のケアとは、とても時間が掛かり、根気のいるものです。
焦らず、少しずつ心の傷を癒すようにしましょう。
PTSDと発達障害の類似点
現代は比較的に若い世代である10代の時期までに様々な精神疾患や心身症を発症し、しかも一つだけではなく複数の症状が表れ、様々な病名で多重診断をされ、年齢とともに診断名が変わることで、治療が上手くいかない、難治性で苦しむことが増えています。
ある病気のようでありながら、別の症状も示すなど不可解な患者が増えたことで、診る医師によって診断名が変わることもあるそうです。
これまで主流だった薬物療法も抵抗性があり、強い副作用が出たり、逆にほとんど作用しないなどで効果のみられないケースも増えているのです。
先に述べたように、PTSDと発達障害の類似点として、
- 集中力の低下
- 過覚醒
- 睡眠障害
などがみられます。
さらに、この両者の特徴を併せ持つものに発達性トラウマ障害(DTD)があります。
これは、2005年にボストン大学のベッセル・A・ヴァン・デア・コーク教授が新たな疾患概念です。
DTDは子供時代の様々な逆境による強いストレス(トラウマ体験)が子供の脳の正常な発達を妨げ、これまで知られていた発達障害よりもさらに強烈な傷を脳に刻み付けてしまうものです。
このDTDは
- 幼児期には愛着障害(保護者である親に対して危険を感じ警戒している混乱した振る舞い)を呈する。
- 学童期にADHDのような多動と破壊的行動障害が全面に表れる。
- 思春期にPTSDと解離症状が明確化される。
- 青年期には解離性障害及び素行障害への展開。
- 成人期に一部は複雑性PTSDに進展。
と成長に伴い、症状が変化して発展するという特徴があります。
それぞれはとても症状が似ているため、鑑別が難しいとされています。
発達障害と診断された人のなかには、このDTDであったであろうという人もいます。
目に見えている症状だけで鑑別できず、元々の診断名が間違ってしまっていると薬の副作用や世間とのズレに苦しむことが多くなる可能性もありますので、解離性障害やPTSDの知識のある医師への相談が必要となります。
さらに発達障害が基盤にある子供がトラウマ経験に巻き込まれやすい、二次症状を抱えやすいといわれているため、問題が複雑化しているなど課題は多いように思います。
まとめ
PTSDの発症は体験直後か数週間~数ヶ月後、6ヶ月以内といわれています。
それは一時的な症状ではなく、継続し、反復します。
そして、心の傷は目に見えず、そして感じ方は人それぞれで個人差があります。
平成26年に埼玉県の秋祭りで知らない男性から怒られた女の子がPTSDを発症したという事件がありましたが、4年が経った今年、女の子側の逆転敗訴が確定しました。
彼女のPTSDにはボランティアの男性に大声で注意され、父親と男性の口論を目の当たりにしたことが発症の原因とされています。
ボランティア男性の対応は女の子の行動に対し注意したもので正当である、親の対応などが問題視されての逆転敗訴ですが、ひとりの子供が、親を含めた大人の言動で心の傷を負ったことも事実です。
子供が何かしてはいけないことをした際に親以外の大人に注意されることも、多々あることです。
時には子供の目の前で大人同士が口論することもあるでしょう。
だから、こんなことくらいで……と感じる人もいるかもしれません。
しかし、子供であっても、大人であっても物事の捉え方や感じ方は人それぞれなのです。
PTSDは『誰にでも起こることではないが、誰にでも起こりうること』であるということを広く認知されていけたら良いと私は思います。
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